就活解禁、税理士事務所への新卒採用は有りか無しか!?
3月1日から2018年卒の大学生による就職活動が解禁されました。
多くの学生さんが企業に就職を目指すと思うのですが、なかには専門職を目指す学生さんなどはその目指すジャンルの専門職の企業、個人事務所に勤めようと頑張られることでしょう。
結論から書きますが、税理士事務所への新卒入社はお勧めしません。
税理士事務所に10年勤めた私の経験ですが、個人事務所には特にブラック企業が多いです。
余程、精神がタフでないと病む可能性が高いです。
職場環境が悪い
個人の税理士事務所は職場環境の悪いところが多いです。
繁忙期の残業は諦めましょう
税理士事務所は残業が多いです。特に1月中旬から3月15日までは所得税の確定申告で残業は当たり前。これは仕方がないので、職場環境としてはある程度諦めてください。
法人の顧客だったら、月々会計処理をしていますから、決算にあたってもそれほど残業になることはないですが(但し、年に1度だけ決算だけ関わる場合や、顧客都合で処理が遅れている場合はしわ寄せがきますので残業が多くなりがちです)、個人事業主さんだと年に1度の関わりの場合も多く、それが2ヶ月ぐらいに集中するので仕事量はオーバーワーク気味になります。
これは仕方がない状況です。
ということで、職場環境の悪さということで繁忙期の残業の多さは諦めてください。
他の仕事でも繁忙期は大変なのは変わりないでしょうから…
ベテラン職員に要注意!
私が思うに、ベテラン職員が幅を利かせすぎているという事務所はかなり職場環境の悪い税理士事務所です。
個人事務所の多くは、所長+ベテラン数名+他は若手職員かパートという構成で成り立っています。
まず、所長ですが、業界全体として6割ほどは60歳以上です。
試験合格での資格取得者のほか、大学院卒業によって試験の一部が免除になったもの、税務署OBなど様々です。
試験合格組だから仕事ができる、試験を受けていないから仕事ができないということはないので、あまり気にすることはありません。
そして、ベテラン職員。事務所によっては、現場を実質的に仕切っているのがこのベテラン職員の場合が多いです。
個人事務所のベテラン職員だと多くは無資格で、実は何十年と試験は受け続けていても通らないが、実務は出来るって人が多いのが現状です。
ただ、お客様はその職員についても「○○先生」と職員にも先生と呼んだりしますので、何か自分が偉くなったのかと勘違いしている職員が多いです。
私が最初に就職した事務所も、その後にその事務所が合併した際に合併先にいた事務所でも、最古参な職員はそういうタイプでした。
ここで面倒なのが、年配のベテラン職員には商業高校や大原などの会計専門学校卒という大卒ではないベテランが多い点です。
高卒がコンプレックスだったのか、合併先にいたベテラン職員は大卒不可で高卒か大学中退と自分と同じものしか採用しないという採用方法を取っていました。
自分より優れていそうなものは立場を脅かされる危険があるので、採用時点で排除しようとするベテランがいる事務所。
そういう事務所があるのが現実です。
仮に採用時点では排除されなくても冷遇されることもあります。
30歳直前まで野菜洗い?
合併先にいた大卒職員の例です。
私が最初に就職した事務所では、最初の数ヶ月は記帳入力などの仕事が主でしたが、所長の方針で積極的に外回り(最初は資料の預かり程度ですが)から、半年も経たないうちに先輩職員の指導のもとに決算にも携わることができました。
その後に合併した際に、合併先には2歳上の職員がいましたが、やっている仕事は記帳入力など単純作業のみ。外回りをしてもベテラン職員の運転手扱い。
どうやら、ベテラン職員さんらが若手の時代には、税理士事務所の主な仕事が記帳入力とかだったので、若手職員は日々黙々と顧客から預かった振替伝票を入力するものという固定概念に縛られていたようです。
私の最初の事務所は、伝票のOCR読み取りや顧客自身によるPCでの記帳(弥生会計の導入)など会計処理の効率化を進めていたので、会計処理そのものは業務全体のなかではそれほどウエイトが重くなかったので、若手にも顧客まわりや決算業務をやるチャンスが多かったようです。
結果として、その職員は私や私の事務所にいた同期より長かったものの、合併後の立場は圧倒的に下となっていました。
経験年数は私達より長いものの、経験値が圧倒的足りなかったからです。
料理の修行で、最初の数年は野菜洗い、下ごしらえってものがありますが、同じようなものです。
確かに、修行という意味で基礎の基礎を徹底的にやるという意味合いが料理人の修行などにはあるのでしょうが、税理士事務所の職員で下働きに5年も飼い殺し状態は意味不明。
ベテラン職員の「私たちの若いころはこれが当たり前だった」という悪しき慣習と下手に育てて自分に取って代わられる恐れから、人材を育てることなく、活かすこともできなかった典型例でしょう。
その他にも、ベテラン職員は自分たちのやり方で数十年仕事をしてきているので、新たに効率的なやり方が出てきても対応しようとせず、事務所運営の足を引っ張っている場合が多いです。
ベテラン職員対策
就職するにあたっては、事務所の年齢構成を確認するようにしましょう。
年配の職員の他は、女性パートやベテラン職員と年齢の離れた若い職員ばかりの事務所は、中堅層が育っていない=若い職員がベテラン職員とソリが合わずに離職している可能性が高いです。
そういう事務所は避けた方がいいでしょう。
女性職員が多い事務所も要注意
男女の構成比率も重要ポイントです。
女性職員が多くなると、なかには女性たちが所内のルールを構築し始めるケースがあります。
特に中年層の女性が多いところでは、パワーバランスが崩れてベテラン職員でさえどうにもならない場合があります。
これが運営上、良くなるルールならいいのですが、多くの場合は自分たちが都合よくなるようにするものが多いです。
職員が好き勝手する職場には碌なことがありません。
また、ある事務所はアラサー女子数名と20代中盤のひ弱い男性でしたが、その男性を「召使い君」と呼んで便利屋扱い。ただ、その男性もその立場を上手いこと利用して、業務評価をあげるといった持ちつ持たれずの関係でしたが。
なかには所長やベテラン職員の愛人が幅を利かせているところもありますし、男女の構成比率は特に要注意です。
薄給は当たり前
同世代の同じようなレベルの大学をでた人より給料は安いです。
試験に合格して、資格登録ができればそれなりに給料はあがりますが、科目合格ぐらいではそれほどあがることはありません。
ある程度の規模の税理士法人だったら定期的な昇給や賞与もあるようですが、個人事務所は所長の裁量という部分が大きいですから安定していませんし、社会保険もきちんと整備されていない事務所も多々あります。
事務所の経営次第では、賞与がいきなり無くなることもあります。
私の例では、基本給に加え、特殊な業務の場合は「この仕事が成功したら売上の○%」という歩合という形式でしたが、この歩合部分で後々に約束を反故にされたケースが多々ありました。
そのうえ、ベテラン職員数名が自分らの担当する法人顧客(事務所顧客のほぼ半分程度)を引き抜いて退社した際には、無理な設備投資による借入返済のしわ寄せで賞与カット。最初の話では賞与は保留から、いつの間にか無し。退職金も払うとはいいながら未払い。その他諸々の立替などかなり未収が溜まっております。
但し、所長の裁量って部分も大きいので、所長に可愛がられており、結婚や子供でも生まれた際には昇給時期でなくてもポンと上がるかもしれませんが、望みは薄いです。
ただ、「給料が上がるとバイタリティーが下がって試験も通らない。試験に通ったら給料はあげる」といった精神論を振りかざす所長もいます。こういうところだと最悪です。
どちらにしても、個人事務所では、所長に代わって実質的に事務所を仕切る立場にでもならない限り、給料は同世代よりかなり低めです。
残業代が反映されない
先述したとおり残業が多い職場ですが、その残業時間に対して残業代がきちんと反映されていない事務所もあります。
しかし、これには仕方がない部分があります。
事務処理の仕事であるので、能力が足りずに処理が遅い職員は残業が多いです。同世代で同じような処理をしていると、仕事のできない職員の方が残業が多くなって手取りがそちらの方が多くなってしまう場合もあります。
悪質な職員となると、残業時間を稼ぐために無駄な資料作りに勤しんでいる場合もあります。
これも私が勤めていた事務所であったケースですが、会計ソフトで簡単に作れる表やエクセル形式に書き出せて簡単にまとめられる処理ってものがあっても、そういう効率的な処理をせずにあえてエクセルで態々作り直すって人が多数いました。
例えば、税額一覧表。
これは、税務ソフトで申告書ができたら自動的に作成されるのですが、これをエクセルで態々作り直して、それを顧客に渡しているベテラン職員がいました。
私が「なぜ税務ソフトで出さないのですか?」と聞いても、「昔からエクセルで作った表を渡しているので」と。その後にベテラン職員が定年後に私が引き継いで税務ソフトの表で渡しても顧客の社長は何も言わないどころか「見易い表ですね」と絶賛。
自分たちの仕事をあえて増やして残業代を稼ぐ。自分の長年のやり方にこだわり続けるという二重の悪い例でした。
その他にもOCR伝票を採用している顧客の会計処理について、OCRなら1時間程度で終わる処理なのに、それを自分で記帳入力することで1日丸ごとそれに費やすものとかもいました。
このように、残業代のためにあえて仕事を遅延させる、非効率化をはかる悪質な職員がいるのも事実です。
こうなってくると、経営者の所長としても、残業時間そのままを反映するのは癪に障るってこともわかる気がします。
ただ、そこは業務の管理によって無駄な処理を減らすべきであって、正常な業務での残業代についてはきちんと支払われるべきでしょうね。
試験勉強に理解がない
これは働きながら資格取得を目指す場合には死活問題です。
8月の試験直前でも残業が当たり前といった事務所ではどうにもなりません。
人によっては、仕事が終わってから専門学校に通う人もいるでしょうが、そういうことへ理解のない所長もいます。
ひどい例では「俺が若い頃はそんなところに通う金もなく、夜中も働きながら気合で試験勉強した!」などと否定論から入る人にも会ったことがあります。たまたまその先生のケースはそれで試験に通ったのでしょうが、それをすべての職員さんに押し付けるのもどうかと…
その事務所から税理士が誕生したという話は聞かなかったので、特殊なケースだったのでしょうね。
試験に通らなかったベテラン職員が足を引っ張るケースもあるので、注意したいところです。
どうしても就職するならどういう事務所がいいか?
そのように就職先ということであまりお勧めではない税理士事務所ですが、働きながら資格取得を目指す人や、それでも税理士事務所で働きたいという奇特な人は下記のことを参考にしてください。
就業規則の確認
就活でいきなり「就業規則を見せて欲しい」なんて言えません。
それに個人事務所では就業規則を明文化していないところも多々あります。
ただ、個人事務所の就活だと面談が主になってきますので、そこで大学やハローワークなどにきている給与体系、休暇、残業についての諸条件について確認をしておきましょう。
そこで曖昧な返事だったり、違和感を感じたらやめておいたほうがいいです。
なかにはエントリーを得るために好条件をあげているところもありますから。
職員の構成比率
職員の年齢比、男女の構成比を確認しておきましょう。
先述したとおり、年齢、男女のバランスから職場の環境もある程度察することができます。
試験勉強に協力的か
これも面談で必ず確認しておいたほうがいいです。
試験勉強組の先生だったら、それなりに理解はあると思いますが、少人数の事務所だったら先生が思うほど事務所に余裕がない場合もあるので、よく話し合っておいたほうがいいでしょう。
先生によっては、自分の体験談をもとに具体的なアドバイスや業界内で他の先生から聞いた試験の話とか教えてくれたりもします。
事務所によっては、税理士試験だけでなく、スキルアップのためにいろんな試験を受けることを推奨していたり、なかには社会人になってから大学院などへの進学も協力してくれる場合もあります(私の場合、大学院へ進学したので、その都合に合わせた休暇を取れるように調整してもらいました)。
以上、あまりお勧めできない個人の税理士事務所ですが、どうしても就職を目指す場合は最低でも上記の3点は確認して就活を頑張ってください!