きったんのぶろぐ

大阪在住の会社員(30代)が書くブログです。

林真理子著、2018年度NHK大河ドラマ「西郷どん」の原作本を読みました。

2018年度のNHK大河ドラマは、西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」でして、林真理子が書いた原作本が既に発売されているので読んでみました。

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大河ドラマの原作本はストーリーの進行に合わせて数冊に分かれて発売されることがここ数年多かったと思いますが、「西郷どん」に関しては最後まで既に執筆済みで発売されたようです。

 

 

 あらすじ

西郷隆盛って?

薩摩藩(鹿児島県)の下級武士の長男坊として生まれた西郷吉之助(のちの西郷隆盛)は、貧しいながらも家族や友人に囲まれ、薩摩武士としての精神性を学び、郷中(地域社会)の少年たちのリーダーとして成長していく。

そのなかで、島津家の名君・島津斉彬に見出されて、幕末の動乱のなかには飛び込んでいき、幼馴染で盟友の大久保正助(のちの大久保利通)とともに、ついには倒幕まで成し遂げて新政府をうちたてることとなる。

その後は、「自分のやることは全て終わった」と一旦全ての職を辞して鹿児島に引き上げて猟師・百姓として家族とほんわかした生活を送るものの、時代が隆盛を放ってはおかず、東京の新政府に呼び出され、大久保らが苦心していた新政府の地固めに奔走する。

しかし、大久保ら岩倉使節団の外遊中に起こった征韓論に巻き込まれ、帰国後の大久保らに征韓論が敗れたことで「自分の役目は今度こそ終わった」と鹿児島に戻って再び猟師&百姓生活。その傍、自分を慕って下野してきた者たちのために開墾社や私学校で教育にも携わるが、不平士族の暴発が続くなか、その火種が鹿児島にまで飛び火し、西南戦争が勃発。西南戦争では、その身を桐野利秋ら自分を慕って集まる二才(にせ)らに委ねて、最後は鹿児島の城山にて自決する。

 

というのが、西郷隆盛の人生を端折って書いたものです。

西郷隆盛を主人公とした小説では、細部に創作話が盛り込まれはしても大まかな流れは上記のとおりです。

 

林真理子による「西郷どん」

林真理子氏による「西郷どん」では、以下のような特徴があります。

  • 歴史物というより、西郷隆盛という人物像に迫った小説
  • 奄美大島に島流しになった際に現地で生まれた息子、西郷菊次郎が京都市長に就任したところから始まり、副市長に父親である隆盛のことを尋ねられて回想していく。
  • ボーイズラブ。とは言っても戦国時代から続く衆道的なもの(某登場人物との関わり)もあるが、主君島津斉彬にはまっていくところが女性に没頭するところに近い。
  • 戊辰戦争西南戦争に限らず、幕末重大事件的なところは割とさらっと書いてある。まぁ桜田門外の変なんて幕末ものではかなりクローズアップされますけど、西郷が主役となると、桜田門の時は西郷は奄美大島にいましたので伝聞で事の次第を聞くしかないですからね。その現場の状況が描かれないのは仕方がないでしょう。 
西郷どん! 上製版 前編

西郷どん! 上製版 前編

 

 西郷の人物像に迫るというなかで、林真理子氏による解釈も多く含まれていますから、この小説の西郷どん=実際の西郷隆盛ではないですが、作者は歴史が不得意と自分でも認識しているようで、多くの方に意見を聞き、文献を読んで、実際の足跡を取材して回ったようですから、歴史上の人物の人間像の1ケースとして十分な内容だと思います。

歴史小説の人物像と実際にはギャップがある

先述したとおり、歴史小説としてはなかり内容は薄い。歴史的事象に関しては結構さらっと流されています。

このあたりが、歴史小説好きの人たちにはかなり不評のようですね。

 

ただ、歴史小説好きな人たちには、自分の好きな作家が創作した人物像=実際の人物とごっちゃにしている人が多いように見受けられます。

 

新説や新たな解釈で歴史上の人物が語られた映画やドラマ、小説が出てくると「◯◯ってそんなキャラじゃない」と。

ではどんなキャラかと聞いてみると、結局は司馬遼太郎らの小説に出てくる人物像だったり、昔の大河ドラマで重厚な役者が演じてた人物像だったりと。

 

歴史を読み解く際には、歴史小説で読み解くのは大変危険です。

作者の主観が入っていますから、それは歴史ではなく作者による歴史観であることを十分に認識しておかないと、事実と物語がごっちゃになります。

 

歴史小説好き≒歴史好きとは限らないということです。

 

歴史好きと自称している人は、実は歴史小説好きってことになってませんかね?

大河ドラマ「西郷どん」

大河ドラマは1月7日スタートです。

www.nhk.or.jp

主人公の西郷隆盛を演じるのは鈴木亮平。ごっつくて、役に合わせて体重を15キロとか増減させるストイックな俳優さんです。大久保利通には瑛太

俳優は全体的に若手感が強いです。幕末までは実年齢に近くてリアリティもあるかもしれませんが、明治維新後のほうでは大丈夫でしょうか?

翔ぶが如く」のときは、逆に西郷隆盛役の西田敏行大久保利通役の鹿賀丈史、大山格之助役の蟹江敬三などが実年齢より老け込んでましたが、代わりに晩年にはリアリティがあり、特に主役の二人なんてそれぞれの肖像画、写真のイメージによくあってましが、そのあたりはどう近づけるのでしょうか?

どちらにしても、西田敏行鹿賀丈史の両名以上に、明治維新後の二人のイメージに合致する俳優は当分出てこないでしょうし仕方ないのかもしれませんが、写真のない西郷はともかく写真も多数残っている大久保利通はちょっと違うかなぁという気がします。

 

今回の大河ドラマでは、特に感慨深いのは、先にもさらっと書きましたが、大河ドラマ翔ぶが如く」で出演していた人たちが別役ではありますが、再び幕末・明治の人物を演じるところです。

翔ぶが如く」→「西郷どん」

西田敏行:西郷吉之助(隆盛)→語り

鹿賀丈史:大久保正助(利通)→島津斉興

佐野史郎:有村俊斎→井伊直弼

 まだ登場人物は追加発表されていくと思うので、西田敏行鹿賀丈史佐野史郎以外にも「翔ぶが如く」からの俳優さんの起用を望みますね。

 

結び

歴史小説としては幕末の事象がさらっと書かれているので、全体的に物足りなさがありますが、西郷どんという人物を描いた小説としては面白く読めると思います。

表紙の分厚い上製版の他、並製版という少し小ぶりのものもあります。

上製版は上下冊で各1,836円。並製版は上中下と3冊になっていますが各1,000円なので、並製版の方が少し安いです。Kindle版でも上製版は各1,700円なので並製版の方がお得です。

西郷どん! 並製版 上

西郷どん! 並製版 上

 
西郷どん! 並製版 中

西郷どん! 並製版 中

 
西郷どん! 並製版 下

西郷どん! 並製版 下

 

 NHK出版からはいつも通り前編までのストーリー付きガイドブックも販売中。

西郷どん 前編 (NHK大河ドラマ・ガイド)

西郷どん 前編 (NHK大河ドラマ・ガイド)

 

 こちらは購入してみましたが、まだ読んでないので、読んでから追記します。

 

以上、2018年度NHK大河ドラマ「西郷どん」の原作本を読んでみた記録文です。